金曜日のバロックの森のカンタータのあとで放送された《フーガの技法》の中核にあるのが、今朝の放送の《コントラプンクトゥス》。バッハの作曲技術の集大成で、音楽の凝縮度が高い音楽です。1940年頃から作曲に着手されました。1942年には最初の12曲が完成されていましたから、40年代後半には出版のめどが立っていたようです。自筆譜として残されている一冊の津刷りの初めの半分は浄書されたものと言われているほど綺麗な書体で書かれています。
バッハの構想では前半12曲とそれに答える12曲を組み合わせた24曲が予定されていたものと思われますが、19番のフーガ(第14コントラプンクトゥス)が未完となっています。自筆譜には、バッハの息子であるC・P・E・バッハによって、「作曲者は、"BACH"の名に基く新たな主題をこのフーガに挿入したところで死に至った("Über dieser Fuge, wo der Nahme B A C H im Contrasubject angebracht worden, ist der Verfasser gestorben.")」と記されています。バッハの頭の中では完成していたのでしょうかね? ショパンの練習曲集のように分冊で発表していたら鍵盤楽曲として印象の変わった受け止め方が出来たんじゃないかしら。《フーガの技法》には名盤とされるCDが幾つもありますけれども、標準的演奏であるとか決定盤というものはありませんから所有するしないは問題でなく多くの演奏に接することが宜しいと思います。
出版されている楽譜には、未完のフーガを補完する形で『あなたの玉座の前に今わたしは進む (独 Vor deinem Thron tret Ich hiermit)』 BWV 668aのコラール前奏曲が加えられています。バッハが亡くなる時に弟子に口述筆記させたと言うことです。ということは出版される楽譜としては推敲を繰り返しては居たもののバッハの意識の中では《フーガの技法》の全曲は鳴り響いていたのでしょうね。このコラールは未完の部分を分析するためのキーではなくて、“フーガの大家・バッハ”が生涯に残した音楽を白紙にしても後世に残したいと思った旋律だったのではないでしょうか。ロレンツォ・ギエルミのCDでも演奏されています。
バロックの森 -バッハの“フーガの技法”-
案内:礒山雅- バッハの“フーガの技法" - 「フーガの技法 BWV1080から」 バッハ作曲
- 対位法第1 (2分33秒)
- 対位法第3 (2分45秒)
- 対位法第5 (3分33秒)
「フーガの技法 BWV1080から」 バッハ作曲
- 対位法第6 (4分20秒)
- 対位法第7 (2分58秒)
- 対位法第9 (2分50秒)
「フーガの技法 BWV1080から」 バッハ作曲
- 対位法第11 (4分56秒)
- 対位法第12 (2分03秒)
- 対位法第12(倒立形) (2分01秒)
- 対位法第13 (2分11秒)
- 対位法第13(倒立形) (2分13秒)
「フーガの技法 BWV1080から 対位法第14」バッハ作曲
(8分28秒)
(バッハが弟子に口述したとされる作品)」バッハ作曲
(4分46秒)
(フラウト・トラヴェルソ)マルチェルロ・ガッティ (チェンバロ、フォルテピアノ)ロレンツォ・ギエルミ
(演奏)イル・スオナル・パルランテ
放送されたCD<Winter&Winter 910 153-2 > ※2009年6月9日発売