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バッハの構想では前半12曲とそれに答える12曲を組み合わせた24曲が予定されていたものと思われますが、19番のフーガ(第14コントラプンクトゥス)が未完となっています。自筆譜には、バッハの息子であるC・P・E・バッハによって、「作曲者は、"BACH"の名に基く新たな主題をこのフーガに挿入したところで死に至った("Über dieser Fuge, wo der Nahme B A C H im Contrasubject angebracht worden, ist der Verfasser gestorben.")」と記されています。バッハの頭の中では完成していたのでしょうかね? ショパンの練習曲集のように分冊で発表していたら鍵盤楽曲として印象の変わった受け止め方が出来たんじゃないかしら。《フーガの技法》には名盤とされるCDが幾つもありますけれども、標準的演奏であるとか決定盤というものはありませんから所有するしないは問題でなく多くの演奏に接することが宜しいと思います。
出版されている楽譜には、未完のフーガを補完する形で『あなたの玉座の前に今わたしは進む (独 Vor deinem Thron tret Ich hiermit)』 BWV 668aのコラール前奏曲が加えられています。バッハが亡くなる時に弟子に口述筆記させたと言うことです。ということは出版される楽譜としては推敲を繰り返しては居たもののバッハの意識の中では《フーガの技法》の全曲は鳴り響いていたのでしょうね。このコラールは未完の部分を分析するためのキーではなくて、“フーガの大家・バッハ”が生涯に残した音楽を白紙にしても後世に残したいと思った旋律だったのではないでしょうか。ロレンツォ・ギエルミのCDでも演奏されています。